2017
1
Nov

Blog

月に歌うクジラ

すっかり書かなくなってしまいましたが、ブログまた書いてみようかなと思います。
リアルタイムの出来事よりは思い出に残る写真なんかをつたない文章とともに
まあ、きっとたまにの更新になると思うのですが、読んでもらえたらうれしいです。

小笠原はもうすぐザトウクジラの季節です。

この写真はもう数年前ですが、夜明けに一人ボートを出した時のもの。
出航して3分、まだ暗い湾の出口にのんびり泳ぐ2頭のクジラがいました。
まだまだ、写真が撮れる明るさではありませんでした。
日の出とクジラを撮影しようと思っていた僕は東の山の稜線から出てくるであろう太陽を待っていました。
まだ暗い西の空には満月が輝いていました。(たしかこのときはスーパームーンと話題になっていた日です。)

こちらもボートを浮かべのんびり眺めていると、だんだんと空が明るくなってきました。そろそろ撮れるかななど思いながら、夜明けの太陽ばかり気にしていた僕は振り返ってみて驚きました。

西の空は茜色に染まるとともに満月が水平線におりてきているのです。
その美しい光景と言ったら・・・
ぼんやり眺めていたらなんと、その美しい光景を前にクジラが浮上してきたのです。
夜明けの太陽とクジラを撮るためにボートを付けていたつもりだったのですが、いつの間にかクジラは反対方向に泳いでいたようです。
僕は慌ててカメラをクジラに向けました。

空は明るすぎず暗すぎず、
月が見える暗さでクジラが見える明るさ

そんな見事なタイミングでクジラは泳ぎ、何度か呼吸をすると、尾びれを上げて潜っていきました。
それを撮り終えた僕の手はなぜかブルブル震えていました。
なんでかわかりませんが、美しい瞬間の感動と、絶対に撮らなきゃいけないと思う緊張だったんだと思います。
クジラが海の中に消えると、そこにはクジラが潜った水流で海面が沸き立つように動いていました。
それを見ながら、まだ心臓がどきどきしていたのを今でも覚えています。
次にクジラが上がってきたとき、月は水平線にある雲の中に沈んでいました。

_MG_5140

父島に住んで20年、クジラも飽きるほど見て撮影して、水中での怖いような体験や、感動した光景は数知れずあるけど、あの震えるような、でもとても穏やかな静かな感動は感じたことはありません。
あとから潮汐表で調べてみると、月の入りと日の出の明るさの関係で、このようなチャンスは2月、3月に2日ほどしかないということがわかりました。
そして、それを狙って以後も毎年撮影に出ていますが、海が荒れていていたり、でれても夜明けまでにクジラを見付けることができなかったりと、このような幸運には巡り合えていません。

またいつかこんな光景を見ることができたらいいなと思いつつ。

また次回

 

コメント

    • 鈴木直実
    • 2017年 11月 02日

    私は写真家ではありませんでも魂のこもった写真を撮りたいと思っています。人を幸せにする写真です。このようなエピソードを拝見するとドキドキします。これからも楽しみにしています。ありがとうございますm(_ _)m

      • toshiominami
      • 2017年 11月 04日

      うれしいコメントありがとうございます。
      久しぶりに更新したので、あまり見てくれる人もいないと思っていたのですが、コメントまでいただいて、書いてよかったと思いました。
      人を幸せにする写真
      期待にこたえられるように・・・また次回も近々書ければいいなと

  1. この記事へのトラックバックはありません。